※本稿では『ファイアーエムブレム』を『FE』、『ファイアーエムブレム無双』を『FE無双』としています。

プレイアブルキャラクターの選定は
本当に難しかった

キャラの関係性から必然的に登場が決まる

─ イラストは基本原作を踏襲されていますが、リズの絵で笑ってしまいました。手に持っているのものが!
一同 (笑)
臼田 杖じゃなくて斧になってますからね。リズはそのまま原作通りに出すとシスターなので戦えないじゃないですか。もちろん『ゼルダ無双』でアゲハを出したこともあって、杖で戦うという選択肢もあったんです。でも、やはり杖は回復として使いたいということになりました。ですので、斧キャラ不足ということもあって、リズはバトルシスターになったら斧も使えますから、「斧をブン回してご満悦のリズさん」ということで元気に斧で戦ってもらうことになりました。原作にも元気に斧を振り回すイメージがありましたが、豪快に振り回す様子が見られる『無双』ならではの遊びになっているんじゃないかなと思います。
─ そもそも登場キャラクターとして、リズは外せないですし。
臼田 はい。自警団ですから、クロムが出てきたらリズがいないとおかしいですよね。例えばクロムとフレデリクしかいなかったら違和感があると思うんです。そういったキャラの関係性という部分でも、登場は必然的に決まりました。
─ なるほど。しかしそういったキャラ同士の関係も踏まえて登場キャラを選ぶのは大変ですよね。それこそ出さないといけないキャラだらけといいますか。例えばクロムが出るということは、ルキナはどうするのか? ともなりますし。
早矢仕 でもじつは、我々はルキナについては迷走したんです。
─ といいますと?
早矢仕 当初「ルキナを外そうか?」っていう話が開発内で出たことがあったんですよ。でも、任天堂さん、インテリジェントシステムズさんと3社で話し合った結果、「それはさすがにないか」って考え直しました(笑)。
─ なぜ外そうとしたんですか?
早矢仕 当たり前ですが、ルキナが嫌いとかではなくて、単純に剣が多かったというのと子世代だからという理由がありました。
臼田 つまり、子世代と言われる人たちを入れるか入れないかの話で、ルキナを外してしまえば子世代を出さないということでまとめられるんじゃないかって話になったんです。
─ 子世代を何人出すとかの問題や物語の関係性的にも、ということですか。たしかにルキナはそれぐらい重要なキャラクターですもんね。
早矢仕 はい。それでお話ししてみたんです。
臼田 そういう話が出て来るくらいキャラクター選定は困難を極めていました。でも、ルキナは言いすぎました(笑)。
一同 (笑)
─ それではルキナは、どんなキャラクターになっているんでしょうか?
臼田 ルキナはクロムと親子なので、同じ剣術を使う設定がありますよね。ですので、ルキナとクロムは同じ剣術を使いますが、そのぶん奥義で個性を出しています。ただアクションをつくっていったとき、クロムとルキナの「立ちループ(何もしていない状態)」だけは絶対変えるべきだという話になったんです。なのでアクションは同じですが立ちループは異なっています。で、キャラごとに構えを変えるという法則がルキナで生まれました。たくさんのキャラクターが出てくると、同じクラスだとある程度は同じ動きのキャラが出てきてしまうんですが、ルキナで立ちループを変えるということが決まったので、だったら全キャラ、たとえ同じクラスだったとしても必ず構えだけは同じ動きにならないようにしました。そのルールをつくったのがルキナだったんです。
─ 外す提案をしたけれど、キャラクターの個性付けの法則をも生み出した核キャラクターになったんですね。
早矢仕 結果的にはストーリーもおもしろくなりました。とくにルキナが初登場するとき、『FE』ファンからの総突っ込みを受けるだろう展開にもご期待ください(笑)。
臼田 詳しくは言えないですけど、ルキナってどうやって登場するんだっけ? っていうところで。
─ 立ち絵イラストのポーズも、原作ではルキナであってルキナじゃないですから(笑)。
早矢仕 みんなわかっていらっしゃるでしょうけど、最初は違う名前を言いますからね!
一同 (笑)
─ ところで、英雄たちは原作の物語のある地点から『無双』の世界に集うわけですよね。『無双』の世界でクロムとルキナが出会ってしまって大丈夫なんですか?
早矢仕 するどいですね。
臼田 そこは少しパラレルワールドと受け取ってもらえればとは思います。ただ、原作でのキャラの関連性とは違和感がないようにつくってはいますので、2人がどういったやりとりをするのかは楽しんでほしいところです。

三すくみではないルフレと斧のフレデリク

─ 続いてルフレについて教えてください。イラストは『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U/Nintendo3DS』の立ち絵のような感じですね。
早矢仕 そうですね。『スマブラ』のイメージから踏襲しています。
─ 武器は魔道書ということで、剣・槍・斧の三すくみから外れたものになっています。
臼田 もちろん魔道書以外にも原作では剣を使えたりするのですが、剣はいっぱいいましたので、今回は戦術師ということで魔法をメインに、爽快な範囲攻撃でいくことにしました。ルフレは三すくみではない武器をつくった最初のキャラクターで、どんな特徴を付けるかを練りながら制作していきました。
早矢仕 戦闘中に魔法名を叫んでくれるのがいいんです。
臼田 今回、アクション中も結構喋るようにしています。全キャラ、全アクション何かしら喋りながら、コンボをしているときも喋ります。ルフレはそれが魔法名なんですが、「エルファイア」とか「エルサンダー」とか叫ぶんです。今回の魔道書は、原作のように「サンダーの書」などには分かれていないので、1つの魔道書なんですけど、いろいろな属性の魔法が技によって出るようになっています。
─ ちなみにルフレも最初から登場を決めていたんですか?
臼田 クロムが出るということはという流れです。やはりクロムの半身であるルフレがいないのは違和感がありますよね。
─ さきほどの話じゃないですが、その理論だと今回公開されたキャラって、最初から出すのはすべて確定じゃないですか!
一同 (笑)
臼田 だから、本当にキャラの選定は難しかったんです。まず弊社の『FE』好きスタッフたちが、出したいキャラ候補をバーって武器種とともにA〜Cのランクで分けて出したんですね。Aはストーリーへの関わりや知名度のあるキャラ。Bは強さや思い入れのあるキャラ。Cはできれば出したいというキャラで。でも、そのうちなぜか謎のSというランクが出来ていて。
一同 (笑)
臼田 この人たちはいないとおかしいと思いますランクです。結果、ランクSが多くて(笑)
早矢仕 SとAが多すぎて、通常よりも多くのキャラを入れているんですが、Bあたりから入れられない状況になり、ほとんどのキャラが戦いにやぶれていきました。
─ これまで発表されているキャラも含めて、今のところ外せるキャラはいないですよね。フレデリクも自警団メンバーだしなぁと思いますし。
臼田 そうなんです。フレデリクはSではなかったんですが、最終的に当確した感じです。やっぱり『覚醒』で重要なキャラを選ぶとしたら、キャラ同士の関連性も含めてまずは自警団メンバーからですよね。それと武器種も大きかったんです。候補で入れたいキャラを並べたときに、斧キャラが足らなかった。で、キャラ的にもグレートナイトは騎馬でアーマーという特徴がありましたから。フレデリクはどちらかというと銀の槍のイメージがある人も多いと思うんですが、3武器種使えるクラスでしたし、騎馬ではないアーマーはアーマーナイトという兵種があって槍を使いますから、グレートナイトには斧を持ってもらうことで登場に至ったんです。それに、会話的なところでもクロム様絶対死守や小石拾いなど、わかりやすい特徴があったので僕の中では最初から当確していた感じでした。

声優とのやりとりと読者へのメッセージ

─ 声優さんとのやりとりで印象に残っていることはありますか?
臼田 今回はフルボイスなので、全部喋っていただきたいという話をしてものすごく分厚い台本を渡しました(笑)。ただ皆さんすごかったのが、プロとしては当たり前なのかもしれないですけど、それぞれのキャラクターを愛していて、こちらの説明が足りなくても、ご自身で修正してくださるんです。こちらがリテイクを出そうと思っていることを先にご自分でリテイクを出して録り直すっていう。緑川光さん(マルス役)なんて「もう1回いいですか?」って、4回も5回もご自分で修正されて、どんどん期待していたところにもっていってくれるんです。こっちはもうブースの向こうで「そうです!」ってはしゃいでるという(笑)。フルボイスで聞けるのも含めて、うれしくてしょうがなかったですね。
─ 臼田さんが好きなマークスのときはどうだったんですか?
臼田 小西克幸さんの収録もすごく楽しかったです。こちらも声を聞きながら「えぇえぇ、そういうことです(しみじみ)」って思ってました(笑)。「こういう感情を込めて」とかト書きに書いていなくてもやってくださるんで、セリフの字面だけでも伝わっているんだなと。最高のボイスでした。
─ 原作のオマージュが入っているというお話をされていましたが、原作のような会話もフルボイスで行われるということなんですか?
早矢仕 そうです。
─ となると、声優さんたちは原作からの再収録のシチュエーションもあったりするんですよね?
臼田 だから、「どっちでやりますか?」って言われたりしました。「このセリフは原作とまったく同じですけど、原作と同じ言い方にしますか? それとも今回風にアレンジしますか?」って。字面は一緒だけど流れが多少違ったりもしますので、本当に皆さん、すごかったです。
─ といったところで、今回はこのへんでお時間になってしまいました。次号もまたお願いします。
早矢仕臼田はい!
─ では最後にこれだけは伝えておきたい! ということをお願いします!
早矢仕 出し惜しみをしていますが…まだまだ登場キャラはいます。誰が出るかを想像して楽しんでください! まだ『覚醒』からも登場しますので!
臼田 今回の発表は『覚醒』からだけでしたが、どの辺りのキャラが出て来るのかがわかってもらえたと思うんです。今後、『if』や『新・暗黒竜と光の剣』ではどうなるのかも予想してもらえたらと思います! また、フルボイスの本作には我々開発スタッフだけでなく、声優のみなさんの愛もたくさん詰まっていますので、ぜひご期待ください!
プロフィール
回答者
(コーエーテクモゲームス)

プロデューサー
早矢仕 洋介
『ゼルダ無双 ハイラルオールスターズ』から引き続きプロデューサーを務める。


ディレクター
臼田 浩也
『ゼルダ無双 ハイラルオールスターズ』から引き続きディレクターを務める。