※本稿では『ファイアーエムブレム』を『FE』、『ファイアーエムブレム無双』を『FE無双』としています。

無双』か『FE』かと聞かれたら、
『FE』だと思ってつくっています

2017年1月13日の「Nintendo Switch プレゼンテーション 2017」でティザー映像が公開され話題を呼んだ『ファイアーエムブレム無双』。それから「E3 2017」(アメリカで行われるゲーム業界の見本市)で発表された内容まで、初報時のインタビューをお届けします。参戦シリーズを選んだ理由や開発経緯など、開発陣の熱い『FE』愛もお楽しみください。

開発のきっかけと発表後のすさまじい反響

─ 本作の開発経緯からお聞かせいただけますか?
早矢仕 3DS『戦国無双 Chronicle』などで、リアルタイムに下画面で操作キャラクターを切り替えられる少しタクティカルな遊びが入っていたんです。それがすごく好評だったので、3DS『ゼルダ無双 ハイラルオールスターズ』をつくるときにも入れたんですね。キャラの表示数がWii U版に劣ってしまうぶん、戦略的な遊びをより深くしたいという思いもありまして。そんななかで、「これを剣と槍と斧の3すくみの仕組みにしたら『FE』にすごく合うんじゃないかな」って思ったのがきっかけでした。
─ なるほど。
早矢仕 ソシアルナイトをこっちに行かせて、相性がいいと蹴散らせるみたいな遊びのイメージもすぐにできました。そこで社内の『FE』好きスタッフに「極秘のミッションがある」と声をかけて、「キャラクター・兵種を切り替えて斬り込んでいく『無双』にしたい」という『ファイアーエムブレム無双』の企画書をつくりました。
─ 早矢仕さんの極秘プロジェクトとして。
早矢仕 社内の誰にも話さずに(笑)。その後、任天堂さんと「新ハードでも何か一緒にやりましょう」という話をする機会があったときに「待ってました! やらせてください!」って、その日のうちに提案したんです。
一同 (笑)
早矢仕 そうしたら任天堂さんも「いいですね」と言ってくださって、すぐに制作が決定したんです。
臼田 僕はこの時点ではこのやりとりを知らなかったんです。
早矢仕 臼田はそのときまだ『ハイラルオールスターズ』を一生懸命つくっていました。そのときにちょっと呼んで「『FE』好き?」って聞いて(笑)。
─ ということは『ハイラルオールスターズ』と並行して開発がはじまっていたんですね。
早矢仕 並行ではないんですが、『ハイラルオールスターズ』制作中に現場スタッフたちと議論を始めていたのはたしかです。ただ、その頃は普通にプレイヤーとしてシリーズ全体の話とか『if』の話をしたりしていただけですが。「誰と結婚した?」とかね(笑)。
─ チームの次回作を研究するためにみんなで『if』をプレイしていたと。
早矢仕 研究っていうと聞こえはいいんですが、ただファンとして遊んでいただけです。
一同 (笑)
早矢仕 『ゼルダ』同様、『FE』にも長い歴史があるので、うちのスタッフも何かしら触れている人間が多くて、思い入れの箇所は違えど、みんな『FE』シリーズが好きなんですよね。だから、そういった制作に入る前のディスカッションはすごく盛り上がりました。それこそ「『暁の女神』が好き」とか「初代しか認めない」という人間もいて。「『if』のサイゾウとスズカゼって、赤緑ポジションだよね」とか、別の会議中に話題にでることすらありましたから(笑)。
─ そして1月13日の「Nintendo Switch プレゼンテーション 2017」で『FE無双』は発表されました。その反響はいかがでしたか?
臼田 国内外でものすごく反応があったのでうれしかったです。
早矢仕 我々はプレゼンテーションの全容を知らないわけです。もちろん話題になってくれたらいいなとは思っていましたが、すごい新作がいっぱい出るだろうから、話題として5本目くらいに入れればいいなと思っていたんですね。そうしたら「twitterで『スプラトゥーン2』の次に話題になっています!」って連絡がきたんですよ。もう「やったー!」って(笑)。
一同 (笑)
早矢仕 プレッシャーよりも何よりもまずはうれしかったです。動画も狙い通りで、熱心なファンの方々にはオーブと剣の演出でわかっていただきつつ、最初は「なんだ?」って思っている人たちには、『FE』のメインテーマが流れた瞬間にわかるものにしてみました。どちらにも驚きを感じていただけたと思います。
臼田 まぁ半分ぐらいの方々は最初の部分でわかっていたようですが(笑)。
─ 編集部では「今、何の剣が流れた?」みたいな話で盛り上がりました。
臼田 でも仕込みに気づいてくれているファンがそれだけ多いということはうれしかったですね。
早矢仕 E3でちゃんと発表しましたけど、今回発表したものってそのときのティザー映像の内容なんですよね。だからファンの人には、あの映像から3タイトルにしぼるのも、登場する剣からプレイアブルキャラクターに誰がなるのかも、感じ取っていただけたのではないでしょうか。

『無双』らしさであることより『FE』らしく

─ 『FE』大好きなみなさんがファンのためにつくる。期待は高まりますね。
早矢仕 ありがとうございます。ただ『FE無双』って難しい点があるのも事実なんです。『ゼルダ無双』を発表したときは、どんなゲームになるんだろうっていう感じだったと思うんですが、今回はお客さんのなかで、すでにこんな感じのゲームだろうなっていうのをそれぞれ想像されていると思うんですよね。
─ で、触ると「これは僕の思い描いたものと違う」となると。
早矢仕 ということもありえるタイトルだと思っているんです。でも、私たちはそれを極力なくしたい。ファンの皆さん全員が「これが『FE無双』だ」って思えるものを目指していますので、ひとつひとつの要素、アイデアをくみ取ってすべて詰め込んでいます。例えば歴代のシリーズファンは、キャラだけでなく、システムにも愛があるじゃないですか。だからこそ我々は、ペガサスナイトで弓兵に突っ込んでいくということがいかに無謀なものなのかも表現しないといけないわけです(笑)。
─ 3すくみシステムがやりたいというのが根底にありつつも、そこからはもういかに『FE』らしさを詰め込めるかみたいな感じなんですね。
早矢仕 はい。レベルアップにしても、音楽の後に「ピンピン」って能力の上がる効果音を入れたいじゃないですか(笑)。でも『無双』としては、それを入れるとアクションのテンポが悪くなるんです。だけれども、ここはゲームを止めてでも入れないとダメだとか、という議論を常にしています。常にみんなの求める『FE無双』を詰め込んでいるんです。
臼田 アクションとの相性があるのでなかなか大変なんですが、これらをひとつひとつ丁寧にやらないとただの『無双』になってしまいますから。
─ なるほど。
臼田 だから今回、『無双』らしさであることよりは、『FE』らしくあることを意識しています。もちろん、社内では「無双とはこういうものじゃない」みたいな話もありました。
─ 社内の大事なIPである『無双』よりも、『FE』であるべきことを重視していったということなんですか?
臼田 もちろん、アクションゲームという意味で越えられない部分は存在するんですけど、「『無双』か『FE』か、どっちが優先か」って聞かれたら、僕自身は『FE』だと思ってつくっています。
─ そうなんですね。ちなみに『FE無双』ならではということでお聞きしたいのは、原作では1軍隊を1ユニットで表現されていますよね。『FE無双』ではこれまで実現されていない、そういった軍を率いている感じも体験できたりするんでしょうか?
臼田 一騎当千ではあるので、原作同様にマルスの軍隊は1ユニットで表現されます。そのかわり、これまでよりも1バトルに連れていけるユニットの数を増やしました。そこは原作に近づけなきゃいけない部分だと思ったんです。
早矢仕 敵側は、例えば『FE』ではボスのアーマーナイトが砦にドーンと1体で構えていますよね。『FE無双』では砦にアーマーナイトが1体いるのではなくて、その周りに兵士が200〜300人いて、そこにマルスで突っ込んでいく感じのゲームなっています。
臼田 だから、だいぶシステム的にも『FE』として違和感のないものになっているはずです。
早矢仕うん。本当に「求めていた『FE無双』の完成形」に限りなく近くなっているんじゃないかなと思っていますので、あとは皆さんに早く触っていただきたいです。
─ 後編に続きます!
プロフィール
回答者
(コーエーテクモゲームス)

プロデューサー
早矢仕 洋介
『ゼルダ無双 ハイラルオールスターズ』から引き続きプロデューサーを務める。


ディレクター
臼田 浩也
『ゼルダ無双 ハイラルオールスターズ』から引き続きディレクターを務める。