※本稿では『ファイアーエムブレム』を『FE』、『ファイアーエムブレム無双』を『FE無双』としています。

キャラクターの選定とその難しさ
すべてはクロムから始まった

E3での反響を受けてのインタビュー。そのとき公開された『ファイアーエムブレム 覚醒』のキャラクター情報をメインに、どのようにプレイアブルキャラクターが決まっていったのか、その選定について胸の内を語っていただきました。

E3での発表を終えて

─ E3(毎年アメリカで行われている業界最大の見本市)を終えての感想を教えてください。
早矢仕 任天堂さんのタイトルがいっぱいあったので埋もれてしまうか心配はありましたが(笑)、「このキャラたちがゲームのコアなメインキャラクターである」ということをお伝えできたと思います。まだまだ全容の2割ぐらいですけどね。あとはこれまでいろいろなところでお話ししていた「プリレンダムービーでしか見られなかったクオリティのキャラクターが動かせる」というのを、実機でお見せすることができました。だから「本当にそうなんだ」って、ユーザーの皆さんを安心させることができたんじゃないかなと思っています。
臼田 僕は日本にいたので、ユーザーさんと同じように発表や「ツリーハウスライブ」(E3開催中に行われる任天堂の開発者が直接ゲームを紹介するプレゼンテーション。早矢仕さんも登壇。→YouTube)を観ていました。壇上でプレイしている方々が楽しそうに遊んでいるのを見てうれしかったですし、日本では結構遅い時間の放送にもかかわらず、SNSなどでは多くの方々が反応してくださっていたので、本当にありがたいなって思いました。
早矢仕 日本だと「ツリーハウスライブ」の放送って夜中の3時とかでしたよね。
臼田 いつ来るんだろうって待ってました(笑)。で、はじまったらマークスとかリョウマが出てくるたびに、「私の旦那だ」って盛り上がっていたのが印象的でした。
早矢仕 こちらもまさにそんな感じで。プレイしている人たちも「oh! my husband!」って、「私の旦那たち、私を取り合わないで」みたいなことを言いながらやっている人が多かったんです。思わずアメリカにも「俺の嫁」的な表現があるんですか? って聞いちゃいました(笑)。
─ 早矢仕さんが「ツリーハウスライブ」でお話しされていたことについてお聞きします。まず「闘技場」の存在ですが、これはどういったものなんでしょうか?
早矢仕 闘技場はストーリーモード以外のやり込みモードのひとつですね。
臼田 ええ。何回戦突破!みたいな感じのものになります。そもそもやり込みモードは、何回もバトルをするものなので、種類がないと飽きる部分もあるんです。それで、これまでの『無双』になかった完全新規のものもつくろうということになって、「やっぱり『ファイアーエムブレム』(以下『FE』)なら闘技場じゃないですか?」という話になったんです。ですので、そういったネタバトルだったり、大規模な特殊ルールの遊びがあるうちのひとつとして闘技場が入っています。
早矢仕 詳細はまた後日ちゃんと発表しますので、ご期待ください。
─ あとレベルアップ演出などはオンオフができるという話もありました。
臼田 僕は当初、『FE』なんだからレベルアップ演出は当然で、飛ばせないようにしていたんです。でもアクションゲーム的に頻繁に止まるのはちょっとという話がでまして。
早矢仕 ええ。私も入れる派だったんですけど、アクションゲームをちゃんと遊んでほしい派からすると、アクションの最中に画面が止まるのはって。ですので、選べるようにしました。
臼田 レベルアップのほかにも、E3だとミッションがはじまるたびに画面が止まってターゲットが表示される演出が入っていたと思うんですが、ああいったものもオンオフできるようになっていますので、スムーズに移動ができます。ですので、もともとシミュレーションRPGを遊ばれている方と、無双アクションを遊ばれている方、どちらにも遊んでいただきたい気持ちが強いので、そこはすべて選択できるようにして自分の遊びやすい環境でやっていただければと思っています。

双子の武器種を剣にした理由

─ そういえば「登場するキャラの武器種に剣が多いなかで、主人公の双子を剣キャラにしたのはなぜか?」というのも話題になっていましたね。
臼田 そうですね。剣キャラが多いので、男の子は斧、女の子は槍にしようといった武器の話は開発中にもありました。ですが、双子はロードですし、そもそも序盤のゲームデザインをするうえで、アクションゲームをあまりやらない方にもちゃんと遊べるものにしたかったので、チュートリアルをしっかりつくりたかったんですね。そうなると、敵の配置やプレイ経験も変わってしまいますし、主人公によって武器種が変わるのは違うかなと。剣からはじまり三すくみを理解してもらいたい。『FE』をもともと知らない人でも、どんなルールなのかを理解してもらうために2人はどちらを選んでも変わらないようにしたんです。
─ ちなみに武器種はキャラごとに変更できたりもするんですか?
臼田 いえ、武器種を変えることはできないので双子はずっと剣になります。

クロムが最初に生まれたキャラクター

─ ここからは今回発表されたキャラクターたちについて、お話をお聞きしていこうかと思います。今回は『覚醒』のキャラクターたちですよね。
早矢仕 はい。クロムが最初につくられたキャラクターだったりもしますので。
臼田 僕はこの時点ではこのやりとりを知らなかったんです。
─ 全体のなかで、クロムが最初につくられたキャラなんですか?
臼田 いちばん最初はクロムで、そのあとは同時並行でつくりました。最初にクロムを選んだのは、原作のプリレンダムービーレベルまでグラフィックをあげようという話のなかで、原作のムービーにクロムやリズが登場しているからモデルがあったんですよね。
─ 参考にできるものがすでにあったと。
臼田 はい。それに見た目だけではなくて、クロムはロードで剣なので、アクション的にもスタンダードな立ち位置でした。『FE無双』のアクションを実験していくなかで、どこまでの表現を入れるかという話をしたのもクロムだったんです。それこそ原作の動きであるとか、バトル中のアクションを入れてみたり、イラストで使われているポーズやパッケージで描かれているポーズなども入れて、『FE無双』のアクションの方向性、つまりアクションの骨格を決めたすべての原点がクロムになります。
─ ではクロムができるまでがいちばん大変だったと。
早矢仕 そうですね。『覚醒』キャラの奥義(乱舞。本作の必殺技)のポーズは飛んでいるんですが、あの角度も横から見ると原作のパッケージ絵になっています。
臼田 ほかにも原作の闘技場であったグルグル回転させながら斬る動きも入れようとか、派手なアクションを入れていく話を常にしていました。なぜなら『ゼルダ無双』が結構はちゃめちゃな部分があったので、剣をただ振るだけのキャラクターだと動きが地味になってしまうんです。
─ あっちは月を落としたりとかできましたからね(笑)。
早矢仕 なので、『ゼルダ無双』から地味になったと思われたくなかったというのもあります。でも一時期ひどくて、演出が派手すぎて画面が見えないとか言われていたこともありました(笑)。
臼田 エフェクトをどこまで派手にするのかの実験も重ねていたんですよね。だから最初はオーラであったりとか、めちゃめちゃ盛るだけ盛ったんですが、プログラマーからは「処理が重くなる」とかも言われたりして(笑)。そこから調整していきました。
早矢仕 「これ、敵が見えなくて無双じゃないよ!」って話も出てね。
一同 (笑)
─ 後編に続きます!
プロフィール
回答者
(コーエーテクモゲームス)

プロデューサー
早矢仕 洋介
『ゼルダ無双 ハイラルオールスターズ』から引き続きプロデューサーを務める。


ディレクター
臼田 浩也
『ゼルダ無双 ハイラルオールスターズ』から引き続きディレクターを務める。